初似顔絵ボランティアで受けたやりきりない苦しさ「届かなかった線」
「届かなかった線」 福祉の場で似顔絵のボランティアをする機会をいただいた。私は、前日から気合いをいれ、練習をし、本番では心を込めて、目の前の人を丁寧に見つめながら描いていた。似顔絵というのは、顔のパーツだけでなく、その人の雰囲気や在り方までを映しとる作業だと私は思っている。
だから、できるだけその人の真正面から、耳や表情などを見せてもらえると、とても助かる。
今回も「もし可能なら、正面を向いていただけますか?」とお願いをした。
でも、相手の方は何度かこちらを見ているように感じたのに、最後まで顔を逸らしたままだった。
その人は、その場の責任ある立場にいる方だった。私が描き終えて似顔絵をお渡ししたとき、「ありがとうございます」と言ってくれた。
でもその瞬間、わずかに聞こえた「ふふっ」という笑いに、私は胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。 それは嬉しさの笑いではなかった。
まるで、私の一生懸命を軽く受け流すような、馬鹿にするような響きに感じられた。
もちろん、それが本当にそういう意図だったのかは、私にはわからない。でも、描く側は、全神経を集中させて線を引いている。誠意をこめて向き合っているからこそ、その一言や態度の温度差に、大きく傷つく。 私は今まで、何度も似顔絵を描きながら、人の温かさや優しさに触れてきた。でもこの日は、「描かせてもらう」ということの意味を、改めて問い直す時間にもなった。 ボランティアとはいえ、遊びでやっているわけではない。本気で、真剣に、その人を描きたいと思っていた。 「もう少し、向き合ってくれたら」と今でも思う。
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